パーキンソン病の散歩は「歩数」じゃない?大切なのは“どれだけ歩いたか”より“どう歩いたか”
2026.09.02 更新
パーキンソン病の散歩は「歩数」じゃない?大切なのは“どれだけ歩いたか”より“どう歩いたか”
こんにちは。PDitの小川です。
今日は、パーキンソン病の方からよく聞く「散歩」についてお話しします。
皆さん、普段どのくらい歩いていますか?
「毎日1万歩を目標にしています」
「健康のために1時間歩いています」
「毎朝、散歩するのが日課です」
という方も多いと思います。
もちろん、歩く習慣を持つことはとても大切です。
ただ、パーキンソン病の方の運動を長年みてきて、僕が最近特に大切だと思っていることがあります。
それは、
「何歩歩いたか」だけではなく、「どう歩いたか」を大切にしてほしい。
ということです。
1時間半〜2時間歩いているのに「全然疲れません」
以前、こんな方がいらっしゃいました。
毎日のように長時間ウォーキングをしていて、とにかくたくさん歩いている。
「運動はかなりしています!」
とおっしゃっていました。
でも、実際の歩き方を見せてもらうと、パーキンソン病にみられることのある、
歩幅が小さく、ゆっくりとした歩き方
になっていました。
そこで聞いてみました。
「これだけ歩いて、疲れませんか?」
すると、
「そんなに疲れないです」
とのこと。
ここが一つのポイントです。
長時間歩いているからといって、必ずしも身体に十分な運動負荷がかかっているとは限りません。
小さな歩幅でゆっくり歩いていると、お尻や体幹などを十分に使えていない場合があります。
だから僕は、その方に、
「そんなに長い時間歩かなくてもいいので、歩き方を変えてみましょう」
とお伝えしました。
パーキンソン病では「小さく歩いていること」に気づきにくいことがある
パーキンソン病では、動作緩慢などによって動きが小さくなったり、ゆっくりになったりすることがあります。
そして重要なのが、
自分では普通に動いているつもりでも、実際には動きが小さくなっていることがある
という点です。
これは、僕たちPDitが普段からお伝えしている「自分が動かしている感覚と、実際の動きのズレ」にもつながります。
本人は、
「ちゃんと歩いている」
「いつも通り歩いている」
と思っている。
でも動画を撮って見てみると、
「こんなに歩幅が小さかったんですね」
と驚かれることがあります。
だからこそ、
「今日は1万歩歩いた!」
だけで散歩を評価するのではなく、
「その1万歩を、どんな歩き方で歩いたのか?」
まで考えてほしいと思っています。
そこでおすすめしている「PDメリハリウォーキング」
PDitでは、歩き方に変化をつける
「PDメリハリウォーキング」
という考え方をお伝えしています。
やり方は難しくありません。

例えば30分散歩するのであれば、
普通に歩く
↓
少し大きく歩く
↓
少しテンポを上げて歩く
↓
また普通に歩く
というように、歩き方にメリハリをつけます。
ずっと大股で速く歩き続ける必要はありません。
例えば、
1分:普通に歩く
1分:いつもより大きく歩く
1分:少しテンポを上げて歩く
という方法でもいいと思います。
大切なのは、
ただ漫然と歩き続けるのではなく、自分の身体を意識しながら歩く時間をつくること
です。
「大きく歩く」が分からない人は目印を使ってみよう
「大股で歩いてください」
と言われても、
「どのくらい大きくすればいいの?」
と思いますよね。
そんな時は、目印を使う方法があります。
例えば、
「あの電柱からあの電柱まで、普段は10歩かかる」
とします。
それを、
10歩
↓
9歩
↓
8歩
と、少ない歩数で到達できるように意識してみます。
歩数を増やすのではありません。
同じ距離を、より少ない歩数で歩いてみる。
そうすると、自然と一歩が大きくなります。
ゲーム感覚でやってみてもいいと思います。
テンポを意識する方法もある
もう一つが「速さ」です。
スマートフォンにはメトロノームのアプリがあります。
一定のリズムに合わせながら歩くことで、普段よりテンポを意識しやすくなる方もいます。
ただし、
「パーキンソン病なら○BPMで歩けばいい」
というわけではありません。
歩行速度、歩幅、体力、バランス、すくみ足の有無などは一人ひとり違います。
そのため、無理に速くするのではなく、まずは普段の自分の歩き方を知ること。
そこから安全な範囲で少し変化をつけていくことが大切です。
長時間の散歩が「30分でもきつい!」に変わった
先ほど紹介した方にも、歩幅とテンポを意識して歩いてもらいました。
すると、
「30分でも結構きついです!」
とおっしゃいました。
さらに、
「汗もかくようになりました」
と。
今までは長時間歩いても、それほど疲れなかった。
ところが歩き方を変えたら、短い時間でも身体をしっかり使っている感覚が出てきた。
この経験からも、
運動は「どれだけ長くやったか」だけでは決まらない
と感じます。
パーキンソン病の運動は「量より質」を考える
これはウォーキングだけではありません。
僕は理学療法士になってから15年以上、パーキンソン病の方の運動に関わってきました。
その中で強く感じるのが、
「たくさん運動すればいいわけではない」
ということです。
例えば、20種類の運動をなんとなく1時間半やる。
それよりも、
自分に必要な運動を選んで、
正しく動いて、
使いたいところをしっかり使って、
それを繰り返す。
質の高い運動を30分行った方が、その人にとって良い運動になることもあります。
もちろん理想を言えば、
「質の高い運動を、十分な量行う」
ことです。
でも、最初から量を追いかける必要はありません。
まずは5分でも10分でもいい。
「ちゃんと身体を使えた」
という運動を積み重ねていく。
そこから徐々に量を増やしていけばいいと思います。
前回お話しした「反復は力なり」にもつながる
前回のブログでは、
「パーキンソン病には反復は力なり」
というお話をしました。
今回の散歩の話も、実はつながっています。
反復は大切です。
でも、
小さな動きを、ただ1万回繰り返せばいいわけではありません。
まず、自分の身体を知る。
必要な動きを練習する。
できるだけ質の高い動きをつくる。
そして、
その良い動きを反復する。
僕は、この順番がとても大切だと考えています。
明日の散歩から「歩数+1つ」を意識してみよう
だから皆さん。
明日から散歩に行ったら、
「今日は何歩だった?」
だけで終わらせないでください。
そこに一つだけ質問を加えてみてください。
「今日は、どんな歩き方ができた?」
いつもより大きく歩けた?
少しテンポを上げられた?
身体をしっかり使えた?
左右差はどうだった?
疲れ方はどうだった?
スマートフォンで歩いている姿を撮ってみてもいいと思います。
数字としての「歩数」だけでは分からなかった、自分の歩き方が見えてくるかもしれません。
散歩は「歩数」ではなく「歩き方」も大切
毎日散歩を続けている。
これは本当に素晴らしい習慣です。
だからこそ、その大切な時間をより良い運動にしてほしいと思っています。
1万歩歩かなきゃ。
ではなく、
今日は10分だけ、大きく歩いてみよう。
それでもいいんです。
長時間歩くことだけを目標にするのではなく、
「どれだけ歩いたか」から「どう歩いたか」へ。
パーキンソン病の運動では、この視点がとても大切だと思います。
ただし、転倒しやすい方、すくみ足が強い方、体力に不安がある方などは、大股歩きや速歩きを無理に行わず、主治医や理学療法士などに相談しながら取り組んでください。
そして、まだまだ暑い時期が続きます。
暑い日に無理して外を歩く必要はありません。
涼しい室内で身体を動かすことも、立派な運動です。
まずは安全に。
そして、涼しくなったら、
「歩数を稼ぐ散歩」から「身体をしっかり使う散歩」へ。
ぜひ意識してみてください。
良くなることを、あきらめない。
PDitではこれからも、パーキンソン病の方が運動を「やる」だけではなく、自分に合った運動を身につけ、生活の中で続けられるようになることを目指して情報を発信していきます。
PDit
小川順也
理学療法士/LSVT BIG認定セラピスト/パーキンソン病療養指導士
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