パーキンソン病には卓球が効果的!?
2022.09.23 更新
「パーキンソン病にとって卓球が良いんじゃないか?」という話題が多くあります。
実際にパーキンソン病の方で卓球を始める方がとても多いので、
それだったらしっかりと文献を調べて有効性を知りたいなと思いました。
英語の文献と日本語の文献を検索してみましたが、
英語の文献を2つしか見つけることができませんでした。
ということで、今回はこの2つの文献を紐解いていこうと思います。
まず1つ目!
パーキンソン病における卓球トレーニングの実現可能性と
効果に関するパイロット研究
A Pilot Study of the Feasibility and Effects of Table Tennis Training in Parkinson Disease
元論文はこちら
↓↓
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7853352/
2020年に発表された研究です。
データ取得期間は2018年8月~2018年11月でした。
今回研究に参加した方は9名でした。
9名の特徴の平均は
・平均年齢66.9歳
・性別 男性5名 女性4名
・平均罹患期間8.6年
・UPDRS-partⅢ 23点
・H&Y 2(8名),2.5(1名)
・レボドパ相当量566mg/day
でした。
比較された評価は
Mini-BESTest、PDQ-8、EQ-5D-3L、UPDRS、10mwt、活動量を使用していました。
介入期間と頻度と一回あたりの時間は
介入期間:10週間、
頻度:週2回
練習時間:120分
でした。
今回の卓球プログラムは下記の通りです。
・ウォームアップ
・卓球指導
・10分間の休憩
・スタンス&フットワークのエクササイズ
・基本的な卓球のストロークテクニック
・ボールの方向をコントロールするエクササイズ
でした。
10週間前後で評価結果がどうだったかみてみましょう!
※論文の結果をもとに執筆者がグラフを作成
Mini-BESTestはバランスの検査なのですが、
元々のベースがこの参加者はよかったですが、さらに良くなっている結果でした。
バランス能力が向上したようです。
PDQ-8は生活の質をみる検査です。
PDQ-39という39項目の評価があるのですがその短縮版です。
こちらも良い結果です。生活の質が向上したようです。
UPDRS-partⅢは運動機能を見ています。
世界中で行われているパーキンソン病の評価項目です。
こちらは、結果としては改善が見られませんでした。
歩行速度は速くなっています。
これらの結果から、
バランス能力、歩行スピード、生活の質が向上する可能性があるかな?と思われます。
この研究は参加者が少ないのと期間が短く、
終了後数ヶ月経った後の経過はとられていません。
また、対照群(比べる人たち)は設定されていません。
これらのことから、
効果に関して確固たる結論を導き出すのは困難が想定されます。
卓球を週2回120分を10週間行うことで、
バランス能力、歩行スピード、生活の質が良くなる可能性があるかな?と思います。
週2回、120分は結構な運動量なので、
これだけ運動を行えれば良くなるのも理解できるな〜と私は思いました。
2つ目の文献はこちら!
パーキンソン病患者の卓球:単一施設の前向きパイロット研究
Table tennis for patients with Parkinson’s disease: A single-center, prospective pilot study
元の論文はこちら
↓↓
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8299968/
こちらは日本の福岡県で行われた研究です。
研究デザインは前向き研究で行われました。
期間は2018年11月~2019年5月の6ヶ月間で実施されました。
対象数は12名(H&Y4以下、on timeに自立、PD診断)で
全期間終了したのが9名でした。
介入頻度と期間と1回の介入時間は
・6ヶ月間
・週1回
・1回6時間
でした。
参加した対象者の特徴の平均値です。
・平均年齢71.8歳
・平均罹患期間7.5年
・平均H&Y3
今回の研究での評価項目は
・MDS-UPDRS partⅠ~Ⅳ
・MoCa
・FAB
・SAS
でした。前後で比較されていたのはMDS-UPDRS partⅠ~Ⅳでした。
プログラム内容としては下記の通りです。
より詳細は元論文を読んでください。
・AM準備体操(30分)
・卓球エクササイズ(練習)(2時間30分)
・ランチタイム(1時間)
・PM準備運動(30分)
・卓球練習(ゲーム&ラリー)(45分)
・プログラムのまとめ(10分)
です。
実際に6ヶ月間終わった結果がこちらです。
※論文をもとに執筆者がグラフにしました。
MDS-UPDRSのpartⅡ(日常生活活動)とpartⅢ(運動機能)に改善が見られました。
私はこの結果を最初に見た時に、すごい!って純粋に思いました。
しかし、介入時間や期間を見てみると、
介入時間は1日6時間に設定されていて、
週1回の6ヶ月です。
そして、卓球の効果ということですが、
こちらのプログラムは卓球以外にも簡単な運動も追加されていますので
純粋に卓球のみの効果なのかな?ということが疑問に感じました。
プログラム自体はとても素晴らしい作りになっているなと感じていて、
卓球+運動を組み合わせていて、
なおかつ1回に6時間の介入と週1回、6ヶ月という頻度と期間があればこそ
これだけの結果が出せたのかな?と思いました。
1個目の研究はH&Yが2~2.5だったのに対して
こちらの研究はH&Yが3でした。
1個目の研究よりも重症度が高かったのに対して結果が出せているので
やはり介入期間、頻度、時間が多めだったのがよかったのかもしれません。
ということで、この2つの研究論文を読んでみて
確かに、運動機能やバランス能力は卓球プログラムを行うと良くなりそうですが、
純粋に卓球のみの効果ではないかなと思いました。
卓球だけやっていても、
今回の研究のような効果は、もしかしたら生まれないかもしれません。
卓球だけやっているので安心ではなく、
卓球+ご自身に合った運動をしっかりと行っていくことが必要かなと考えます。
しかし、卓球はとても面白く、手軽にできるスポーツです。
パーキンソン病の卓球の組織も日本にもできたり。
世界大会も行われているほど盛り上がっています。
なので、
趣味としての運動継続にはとてもいいんじゃないかな?と思いました。
まとめに、2つの文献を読んで
私の考えとしては
卓球+ご自身にしっかりとあった運動を継続して行うこと
が重要と考えます。
私も卓球は大好きで、学生の頃はよく友人とやっていたので、
機会があればぜひみなさんやりましょう♪
「根治療法が確立されるまで動ける体作り」を目指して。
パーキンソン病の方を見ているセラピストと
パーキンソン病の方の運動のヒントに少しでもなればと思います♪
執筆者 小川順也
理学療法士/LSVT BIG認定療法士
2011年〜2015年 国立精神・神経医療研究センター病院勤務
2017年〜株式会社Smile Space代表取締役就任
2022年は
パーキンソン病・運動障害疾患コングレスのPDナース・メディカルスタッフ研修会にてパーキンソン病のリハビリテーションというテーマで医療従事者へ向け講演を実施。その他多数の講演にてパーキンソン病のリハビリテーションを啓発している。
著書:パーキンソン病と診断されたら最初に読む運動の本(日東書院)
共著:パーキンソン病の医学的リハビリテーション、神経難病100の叡智
投稿:百年人生におけるパーキンソン病治療の展望 第四刊 「診断早期からの運動継続プログラムで根治療法が確立されるまで動ける体作り」