パーキンソン病の腕振りの非対称性について
2024.08.18 更新
みなさんこんにちは。
パーキンソン病専門の自費リハビリ施設「PDitスタジオ銀座本店」の小川です。
以前のブログではPDit式タイプ別分類についてご紹介しました。
その中で、片側タイプをご紹介しました。
私たちの研究でもまず先に片側タイプについての報告をするために研究データのまとめと論文執筆を進めています。
先行研究がいくつかあるのでその中から今回は、腕振りの非対称性についてご紹介します。
パーキンソン病における腕振り運動学:系統的レビューとメタ分析
という論文です。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S096663622200488X
こちらの論文では
パーキンソン病の方は歩きの中で腕振りの
・減少
・非対称性
が病気の前駆症状として考えられ、広く研究されています。
様々な研究をたくさん調べてまとめてくれた論文になります。
その中で私が注目したのは
腕振りの非対称性です。
腕振りの非対称性とは?
私たちのスタジオに来られる方も、歩きの中で片側だけ腕が振りにくいという方はとても多いです。
左右差がある腕の振りをすることを非対称性といいます。
腕の振りはリズムが合わなかったり、左右差があったりと様々な問題があります。そうすると歩きにくさが顕著になる場合が多くあります。
今回の論文での非対称性のまとめとそれぞれの私見をお伝えしたいと思います。
①PD患者では、特に初期の段階で、患側の腕の振り方が顕著に減少します。
私たちのスタジオに初めて来る方は、診断されたばかりの方から
来週確定診断の予定だけど早く運動したいので来ました。という方までいます。
歩きをチェックすると、発症した側の腕の振りが特に減少している場合も多いです。両方の腕が振れていない場合の方が多いです。
②年齢は腕の振り方に影響を与える可能性があり、PD患者は患側の腕の動きを増やすことで補償できないため、疾患が進行するにつれて動きがより対称的になる可能性があります。
確かに、疾患が進行するにつれて対照的になる方もいますが、進行や年齢が進めど非対称性が埋まらない場合も多く経験します。そう言った方が片側に強い症状のある片側タイプかと私たちは考えています。
③腕の振り方の振幅を増加させると、歩行中の骨盤の動きが促進され、歩行速度、歩幅、遊脚期が向上し、歩行時間、二重支持時間、立脚期が減少します。
私たちの定義するカタカタタイプの方の場合は、腕振りの振幅がとても小さく、歩行も小さくゆっくりになっています。もちろん、骨盤の動きも制限されています。意識して腕を振ってもらうことで骨盤や肩甲骨周りの動きが促進されることをよく経験します。そうすると歩行速度や歩幅もよくなります。
④薬物療法と手術療法(視床下核の深部脳刺激とL-ドパ)は、歩行速度と腕の振り方の振幅を増加させますが、両方の治療法を組み合わせた方が効果的な場合があります。
腕振りに関しては治療法は限定されるという報告がこの論文でもありました。現状は薬物療法や手術療法がエビデンス的にあるのかなと感じています。ただ、私たちのスタジオで歩きの中で腕振りが良くなった方も多くいます。今後は運動療法もしっかりと研究を進めてエビデンスを出していく必要があります。
⑤PD患者は、意識的に特定のパターンを適応させることで歩行を修正することができますが、意識的な歩行は腕の動きを増やすことで歩行メカニズムに悪影響を与えるため、治療では避けるべきです。
確かに、意識的に腕を大きく振ることで歩行のリズムが合わなくなってしまう方も経験します。その場合は、いきなり歩行中に意識してもらうのでなく、ステップする運動の中で腕を振ることを意識する運動を段階的に行なっていくことで、意識下の歩行でも手と足のリズムが合っていくことを経験します。
⑥ 重りを手に持って歩くことで腕の振り方の振幅を増加させる治療法は、デュアルタスクを必要とせず、有効な治療法となり得ます。
腕振りの非対称性に対してデュアルタスク(二重課題)を実施する場合も多くあります。最近、重錘を手足につけて歩く練習や踏み台昇降を実施すると、いつもは手と足のリズムが合わない方もしっかりと合うようになることを経験しました。重錘をうまく使った歩行へのトレーニングはとても良いと感じています。
⑦PD患者の腕の動きのない状態は、特定の地形によって異なるため、リハビリテーションは、現実世界の地形と同様のさまざまなタイプの環境を提供する必要があります。
歩行は平地のみならず、不整地だったり、段差を越えたり、階段の上り下りなど様々な場面で行われます。まずは平地ですが、様々な場面を想定してトレーニングを行なうことが重要です。
先行研究は様々ありますが、まだまだ腕振りについては解明されていないことばかりです。
しかし、私たちのスタジオでは研究を進めて
非対称性等の腕振りについて解明し、より良い運動療法の確立を進めていきます。
PDitスタジオは診断早期のパーキンソン病の方を多くトレーニングを通して関わっています。
これだけ多くの診断早期のパーキンソン病の方へ接することができる施設も多くはありません。
私たちだから気がつけることがたくさんあるので、一つ一つ研究を進めていきます。
PDitスタジオはただのトレーニングジムではなく
研究所(ラボ)の役割も果たしています。
しっかり研究して、多くの知見を世の中に発信して多くのパーキンソン病の方のためになれるよう
引き続き頑張っていきます。
本記事の執筆者
パーキンソン病専門の自費リハビリ施設
「PDitスタジオ 銀座本店」
小川順也(Junya Ogawa)
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PDitプログラムは診断早期から適切な運動の習慣化と集中性により、パーキンソン病の進行抑制を目指したプログラムです。
対面でのトレーニングはPDitスタジオ銀座本店(自費リハビリ)にお越しください。
本日ご紹介した運動が収録されているのはPDitオンラインです。段階的な運動レベルの動画もあります。ご自身に合った運動を選ぶことが重要ですのでぜひ体験してください。
パーキンソン病専門の知識と経験を持った理学療法士のスタッフがパーキンソン病の方へお勧めの運動動画を作りました。さらに東京が遠方の方はオンラインでのリハビリも可能です。
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