運動はできるのに、生活では使えない? ~「学習の転移」という考え方~
2026.08.10 更新
こんにちは。作業療法士の属(サッカ)です。
以前に
「頑張る」より「仕組み」を作ること
についてお話ししました。
今回は少し違う視点のお話です。
実は、
運動ができることと、
生活でその動きを使えることは、
必ずしも同じではありません。
リハビリでは上手にできるのに…
こんな経験はありませんか?
リハビリでは、
「今日は上手にできましたね!」
と言われた。
でも家に帰ると、
「あれ?いつもの動きに戻っている。」
そんな経験です。
これは珍しいことではありません。
むしろ、
多くの方が経験します。

身体ではなく「使う場面」が違う
例えば、
スクワットの練習をしているとします。
リハビリでは、
「お尻を後ろに引きましょう。」
「腰ではなく股関節を使いましょう。」
と意識して行います。
でも、
家で床に落ちた物を拾うとき。
洗面所で顔を洗うとき。
キッチンで下の棚から鍋を取り出すとき。
その瞬間、
「ヒップヒンジ(お尻を後ろに引く動き)を意識しよう。」
とはなかなか思いません。つい背中を曲げて行ってしまいます。
つまり、
運動は覚えていても、
生活の中でその動きを使うタイミングに結び付いていないのです。

これを「学習の転移」といいます
リハビリでは、
学習の転移(Transfer of Learning)
という考え方があります。
簡単に言うと、
練習したことを、別の場面でも使えるようになること。
例えば、
リハビリで練習した立ち上がりが、
外食先の椅子でもできる。
家のソファでもできる。
旅行先でもできる。
これが転移です。
反対に、
リハビリ室だけでできても、
家では使えなければ、
転移は十分ではありません。
PDitで大切にしていること
だから私たちは、
「運動が上手になった。」
だけでは終わりません。
その運動が、
生活のどこで使えるのか。
まで一緒に考えます。
例えば、
「この動きはキッチンで使えますね。」
「歯磨きのときにも同じ姿勢ですよ。」
「買い物で荷物を持つときにも役立ちます。」
そんなふうに、
生活と結び付けながらリハビリを進めています。

今日からできること
今日一つだけ、
試していただきたいことがあります。
自主トレをするとき、
終わったあとに、
「この動きは生活のどこで使えるかな?」
と考えてみてください。
例えば、
スクワットなら、
・床の物を拾う
・洗濯物を取る
・キッチンでしゃがむ
こんな場面が思い浮かぶかもしれません。
その一つを意識するだけでも、
運動と生活が少しずつつながっていきます。
最後に
リハビリの目的は、
運動が上手になることではありません。
生活が少しずつ楽になること。
そのためには、
運動を生活へつなげる視点がとても大切です。
今日の運動が、
明日の生活につながる。
そんなリハビリを、
PDitでは大切にしています。
PDit スタジオ銀座本店
認定作業療法士 属 崇維(サッカ タカヨシ)
参考文献
- Schmidt RA, Lee TD. Motor Control and Learning: A Behavioral Emphasis.
- Magill RA, Anderson DI. Motor Learning and Control.
- Winstein CJ, et al. Motor learning after neurological injury.
- Kleynen M, et al. Using motor learning in neurological rehabilitation. (2014)
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