パーキンソン病の運動は「反復」が大切!たくさんの運動をするより、同じ運動を繰り返そう
2026.08.12 更新
パーキンソン病の運動は「反復」が大切!たくさんの運動をするより、同じ運動を繰り返そう

〜10回・20回では足りない?体に動きを覚えさせる運動の考え方〜
こんにちは。
PDit(パーキンソン病専門の理学療法士)の小川順也です。
今日は、PDitで運動をお伝えするときに、とても大切にしていることについてお話しします。
それは、
「反復は力なり」
ということです。
「運動は、いろいろな種類をやった方がいいんじゃないですか?」
と思う方もいるかもしれません。
もちろん、最終的にはいろいろな動きができることが大切です。
でも、特にパーキンソン病の方の場合、最初からたくさんの種類の運動をすることが、必ずしも良いとは限りません。
むしろ私たちは、
まずは必要な運動を2〜3種類程度に絞って、正しく何度も繰り返す。
ということを大切にしています。
なぜでしょうか?
今回は、私自身のこれまでの経験と、現在PDitで取り組んでいる考え方をもとにお話しします。
病院で働いていた頃は、たくさんの運動をしていました
私は理学療法士になってから、病院でパーキンソン病をはじめとする神経疾患の方のリハビリに携わっていました。
当時は、一回のリハビリの中でいろいろな運動をしていました。
足の運動をして、バランス練習をして、歩いて、自転車をこいで……。
自主トレーニングも、
「これと、これと、これもやってください」
と、たくさんお渡しすることがありました。
もちろん、それで良くなる方もいました。
でも一方で、
「一生懸命運動しているのに、なかなか動きが変わらない」
という方も少なくありませんでした。
当時の私は、
「なぜだろう?」
とずっと考えていました。
その後、病院を離れて、より多くのパーキンソン病の方と長期間関わるようになり、運動方法について試行錯誤を続けてきました。
その中で、非常に大切だと感じるようになったのが、
「運動の種類を増やす前に、一つの動きをしっかり反復する」
という考え方です。
なぜパーキンソン病では「反復」が大切なのか?
パーキンソン病では、運動を学習したり、覚えた動きを自動的に行ったりする仕組みに影響が出ることがあります。
さらに、PDitでは以前からお伝えしているように、
「自分がどのくらい動いているのか」
「どこの筋肉を使っているのか」
といった体の感覚にも注目しています。
例えば、
「お腹に力を入れてください」
とお伝えしても、
「入っているのかよく分かりません」
という方がいます。
お尻の運動でも、
「右は使っている感じがするけれど、左はよく分からない」
ということがあります。
この状態で運動を10種類、20種類と増やしてしまったらどうでしょう?
一つひとつの動きを十分に覚える前に、次の運動へ進んでしまいます。
だからこそ、
運動の種類を増やすよりも、まず一つの正しい動きを何度も経験する。
これがとても重要だと考えています。
「毎日同じ運動でいいんですか?」
PDitで自主トレーニングを始めた方から、ときどきこんな質問をいただきます。
「毎日同じ運動なんですか?」
気持ちはよく分かります。
毎日違う運動をした方が、たくさんトレーニングしている感じがしますよね。
でも、最初に動画を送っていただくと、本人は正しくやっているつもりでも、少し違う動きになっていることがあります。
そこで、
「もう少しここを意識してみましょう」
とお伝えします。
そして翌日、また同じ運動をします。
さらに次の日も繰り返します。
すると、
少しずつ動きが整ってきます。
最初は分からなかった「お腹を使う感じ」「お尻を使う感じ」が、徐々に分かるようになる方もいます。
だからPDitでは、一定期間、同じ運動を繰り返していただくことがあります。
飽きてしまうかもしれません。
でも、
「飽きたから変える」のではなく、「体が覚えるまで繰り返す」。
ここには大きな意味があると考えています。
10回・20回で終わりではなく、休みながら繰り返す
では、何回やればいいのでしょうか?
ここで大切なのは、
「全員60回やりましょう」
という話ではありません。
その人が正しい動きを保てる回数を見極めることが重要です。
例えば、仰向けになってお腹を使う運動をするとします。
最初の5回は上手にできていても、7回目くらいになると急にお腹の力が抜けてしまう方がいます。
この方に、
「頑張って20回やりましょう!」
と言ってしまうと、後半は間違った動きを繰り返すことになるかもしれません。
それでは、反復の意味が変わってしまいます。
そういう場合は、
5回やる → 休む → また5回やる
というように分けます。
そして、休憩を入れながら正しい動きを何度も経験してもらいます。
すると、最初は5回程度で崩れていた方が、徐々に回数を重ねても正しい動きを保ちやすくなることがあります。
つまり大切なのは、
回数だけを増やすことではなく、「良い動きを何回経験できたか」です。
最初は「2〜3種類」でいい
自主トレーニングというと、
「10種類くらいやらないと意味がない」
と思っていませんか?
私はむしろ、最初は逆だと考えています。
5種類、10種類と増やしてしまうと、
「これ、どうやるんだっけ?」
「昨日とやり方が違うかも」
「どこを使えばいいんだろう?」
となりやすくなります。
そのためPDitでは、最初からたくさんの自主トレーニングをお渡しするのではなく、
その方にとって特に必要な運動を2〜3種類程度に絞る
ことがあります。
そして、その運動を丁寧に繰り返します。
大切なのは、
「たくさんの運動を知っていること」ではなく、「必要な動きを正しくできること」。
まずはここを目指します。
特に大切にしているのが「お腹」と「お尻」
PDitで多くのパーキンソン病の方を見ていると、特に丁寧に確認することが多いのが、
お腹とお尻
です。
「力が入っている感じが分からない」
「片側だけ使いにくい」
「動いているつもりなのに、実際には十分に動いていない」
といったことが見られる場合があります。
お腹やお尻は、姿勢を保ったり、歩いたり、バランスを取ったりするときの土台になります。
土台がうまく働かない状態で、いきなり難しい全身運動をしても、別の場所で頑張ってしまうことがあります。
だから私たちは、
まず土台となる部分を丁寧に動かす。
そこから始めます。
「基本の運動」から「全身運動」へ
ここで誤解してほしくないのは、
「ずっと簡単な運動だけをしていればいい」
ということではありません。
最終的には、
歩く
立ち上がる
階段を上る
方向転換をする
スポーツをする
など、複雑な動きが必要です。
だからこそ、段階が大切なのです。
イメージとしては、
① 感じる
↓
② 正しく動かす
↓
③ 反復して定着させる
↓
④ 全身運動につなげる
↓
⑤ 日常生活で使う
という順番です。
土台を作ってから、少しずつ複雑な運動へ進んでいく。
これが、私たちが大切にしている考え方です。
できるようになっても、ときどき「基本」に戻ろう
もう一つ大切なことがあります。
一度できるようになったからといって、
ずっとその状態が続くとは限りません。
いろいろな運動に挑戦しているうちに、以前は分かっていたお腹やお尻の感覚が、少し分かりにくくなることがあります。
だからこそ、PDitでは定期的に、
「基本に戻る」
ことも大切にしています。
スポーツ選手も、上手になったから基礎練習をやめるわけではありませんよね。
パーキンソン病の運動も同じです。
複雑な運動ができるようになっても、
「ちゃんとお腹を使えているかな?」
「左右差は大きくなっていないかな?」
「お尻を使っている感じはあるかな?」
と、ときどき確認してみてください。
PDitでも「反復」の効果を研究しています
私たちは現在、こうした日々の臨床で感じていることを、経験だけで終わらせないために研究も進めています。
例えば、筋肉の活動を筋電図で測定しながら運動を行い、
反復することで筋肉の働きがどのように変化するのか
を調べています。
実際に、運動を繰り返した後に筋活動の変化や歩行の変化が見られるケースもありました。
ただし、これは現在検証を進めている段階です。
「何回やれば必ず良くなる」
という単純な話ではありません。
どんな方に、どの運動を、どのくらい行うと良いのか。
これをきちんとデータとして示せるよう、研究を続けています。
今日から意識してほしいこと
もし今、
「自主トレを10種類やっています」
「毎日違うYouTubeの運動をしています」
という方がいたら、一度考えてみてください。
その運動、本当に正しくできていますか?
たくさんやることより、
今の自分に必要な運動を絞って、正しく、繰り返す。
まずはそこからでもいいと思います。
例えば、
「今日はこの2つを丁寧にやる」
でも十分です。
そして、フォームが崩れてきたら無理に続けず、休憩を入れる。
また正しくできる状態で繰り返す。
「正しい動きを、何度も体に経験させる」
という意識を持ってみてください。
最後に|反復は力なり
パーキンソン病の運動では、
たくさんの種類をやることが、必ずしも正解ではありません。
特に最初の段階では、
運動を絞る。
正しく動く。
繰り返す。
体に覚えさせる。
この順番がとても大切だと、私は考えています。
そして、できるようになったら少しずつ複雑な運動へ。
さらに、ときどき基本に戻る。
運動は、一回やったから体が変わるものではありません。
小さな反復の積み重ねが、数週間、数ヶ月後の動きにつながっていきます。
反復は力なり。
ぜひ今日の自主トレーニングから、「何種類やったか」ではなく、
「良い動きを何回繰り返せたか」
を意識してみてください。
これからもPDitでは、パーキンソン病の方に役立つ運動や研究の情報を発信していきます。
それでは、また!
PDit
小川順也
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