パーキンソン病の方に合った運動とは?
2026.08.06 更新
パーキンソン病の方に合った運動とは?
ヨガやジムを始める前に知ってほしい「感覚のズレ」と左右差
こんにちは。
パーキンソン病専門の理学療法士、小川順也です。
「パーキンソン病と診断されたので、運動を始めたい」
そう考えて、スポーツジムやヨガ、ピラティスに通い始める方は少なくありません。
運動習慣を持つことは、とても大切です。
スポーツジムも、ヨガも、ピラティスも、それぞれに良いところがあります。
ただ、パーキンソン病の方の場合は、単純に「運動すればよい」というわけではありません。
大切なのは、
自分の体にどんな左右差があるのか
どの筋肉を使えていて、どこが使いにくいのか
を確認しながら運動することです。
今回は、パーキンソン病の方に合った運動を考えるうえで欠かせない、感覚のズレについてお話しします。
パーキンソン病は「動き」だけの問題ではない
パーキンソン病の代表的な症状として、
-
動きが遅くなる
-
手足が震える
-
体がこわばる
-
歩きにくくなる
などが知られています。
これらは、目に見えやすい「運動の問題」です。
一方、PDitで多くの方のトレーニングを行う中で、私たちは運動だけではなく、自分の体を感じる力の低下も重要ではないかと考えるようになりました。
実際に利用者さんからは、
「左右で体の感じが違います」
「片側だけ違和感があります」
「背中を動かしている感じが分かりません」
「お腹を使っているつもりがありません」
「お腹の部分が抜けているような感じがします」
といった声をよく聞きます。
パーキンソン病では、動きの大きさや速さを正確に感じにくくなることがあります。
それに加えて、筋肉を動かしている感覚そのものが曖昧になっている方もいると、私たちは感じています。
感覚の問題は、自分では気づきにくい
感覚の問題が厄介なのは、本人がその変化に気づきにくいことです。
たとえば実際には右側の動きが小さくても、本人は左右同じくらい動かしているつもりかもしれません。
お尻の筋肉を使えていなくても、
「両方同じように力を入れています」
と感じていることがあります。
感覚が分かりにくくなっているため、分かりにくくなっていることにも気づきにくいのです。
パーキンソン病は、多くの場合、右または左の片側から症状が始まります。
右側から始まった方は右側、左側から始まった方は左側で、動きや感覚の低下が強く現れることがあります。
そのため、運動を始める前に左右差を確認することがとても大切です。
左右差がある状態で重い運動をするとどうなる?
スポーツジムでは、
-
ダンベル
-
バーベル
-
ウエイトマシン
-
スクワット
-
全身を使った筋力トレーニング
などを行うことがあります。
こうした運動そのものが悪いわけではありません。
ただし、左右差が大きいまま重い負荷をかけると、動かしやすい側ばかりで運動してしまうことがあります。
本人は両側を使っているつもりでも、実際には片側があまり働いていない。
その分、動かしやすい側が必要以上に頑張ります。
その結果、
-
左右の筋力差が広がる
-
体がさらに傾く
-
動かしやすい側に負担が集中する
-
腰や股関節、膝に痛みが出る
といったことが起こる可能性があります。
PDitにも、スポーツジムで一生懸命運動を続けた結果、片側の痛みや左右差が強くなってから相談に来られる方がいます。
運動量を増やせば必ずよくなるのではなく、どのように体を使っているかが重要なのです。
ヨガやピラティスなら安心?
ヨガやピラティスは、
-
柔軟性を高める
-
呼吸を意識する
-
体幹を使う
-
姿勢を整える
-
運動を習慣化する
という点で、とても良い運動です。
しかし、パーキンソン病の方に見られる左右差や感覚のズレを考えずに行うと、やはり動かしやすい側を中心に運動してしまうことがあります。
見た目にはポーズができていても、
-
片側に体重が偏っている
-
一方の脚ばかり使っている
-
お腹ではなく腰で支えている
-
動かしにくい側を避けている
ことがあります。
最近では、理学療法士がヨガやピラティスの資格を持ち、体の左右差を確認しながら指導する場所も増えています。
パーキンソン病の特徴を理解した指導者のもとであれば、ヨガやピラティスも有効な選択肢になります。
ただし、診断直後や左右差が強い段階では、まず自分の体の状態を確認することが先だと考えています。
パーキンソン病の方が最初に行いたい運動
パーキンソン病の方が最初に行いたいのは、いきなり全身を激しく鍛える運動ではありません。
まずは、次のような練習が大切です。
1.左右の違いを確認する
片側ずつ腕や脚を動かし、左右で動きの大きさや重さ、使いやすさに違いがないか確認します。
「右と左で全く同じ」と思っていても、動画で見ると違いが分かることがあります。
2.お腹やお尻を個別に動かす
全身運動をすると、動かしやすい筋肉が代わりに頑張ってしまいます。
そのため最初は、
-
お腹だけ
-
お尻だけ
-
背中だけ
と、使いたい場所を絞って練習します。
3.目で確認する
鏡やスマートフォンの動画を使い、自分の動きを外から確認します。
「大きく動かしているつもりだったけれど、実際は小さかった」
と気づくこともあります。
4.筋肉に触れながら動く
使いたい筋肉に手を当てながら運動すると、どこを動かしているのか分かりやすくなることがあります。
5.左右差が小さくなってから負荷を上げる
感覚や左右差が整ってきたら、少しずつ全身運動や筋力トレーニングへ進みます。
自分の運動を動画で確認してみよう
感覚のズレは自分では分かりにくいため、動画撮影がおすすめです。
たとえば、
-
普通に歩く
-
大きく歩く
-
両腕を上げる
-
スクワットをする
-
椅子から立ち上がる
-
片脚を後ろに上げる
といった動きを、正面や横から撮影してみてください。
確認するポイントは、
-
左右で動きの大きさが違わないか
-
片側に傾いていないか
-
片方の脚ばかり使っていないか
-
腰や肩に余計な力が入っていないか
-
動かしにくい側を避けていないか
です。
自分では同じように動いているつもりでも、映像で見ると明らかな差があることがあります。
ジムやヨガをやめる必要はありません
今回お伝えしたいのは、
「ジムに行ってはいけない」
「ヨガやピラティスは危険」
ということではありません。
どれも、体力や柔軟性、運動習慣を保つために素晴らしい運動です。
ただ、パーキンソン病の方の場合は、
何をするかだけでなく、どの順番で行うか
がとても大切です。
おすすめの順番は、
-
左右差を確認する
-
感覚が分かりにくい場所を見つける
-
お腹やお尻などを個別に練習する
-
左右差を小さくする
-
全身運動やジム、ヨガ、ピラティスへ進む
という流れです。
自分の体の特徴を理解したうえで行えば、一般的な運動も十分に活用できます。
最後に
パーキンソン病の運動では、筋力や体力だけに目を向けるのではなく、
-
左右差
-
動きの大きさ
-
筋肉を使う感覚
-
自分の動きと実際の動きのズレ
を確認することが重要です。
感覚のズレが大きいまま頑張り続けると、動かしやすい側ばかりに負担がかかり、痛みや姿勢の崩れにつながることがあります。
まずは、自分の体を知ること。
そして、動かしにくい側や分かりにくい場所に、丁寧に意識を向けること。
その土台をつくったうえで、スポーツジム、ヨガ、ピラティスなどを取り入れていくことが、パーキンソン病の方にとって大切な運動の考え方だと思います。
運動は、たくさん行えばよいわけではありません。
自分の体に合った方法で、正しく積み重ねること。
ぜひ、日々の運動を見直す際の参考にしてみてください。
以上です。
PDit
小川順也
(理学療法士、LSVT-BIG認定セラピスト、パーキンソン病療養指導士)
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